メダル落としゲーム「プッシャーゲーム」を制作してみようと考えているときに
前後に動く台(プッシャー)を自動で動かすにはどうすればよいかを仕組みなどもあわせて説明します。
①前後運動の観察
②自動化させている部品は?
③「rpm」って何?
④モーターの力(トルク・馬力・速さ)の関係
⑤たくさんのメダルをモーターで押せるようにするには?
⑥まとめとモーターの選定について
①前後運動の観察
まず、ゲームセンターなどでじっくりと観察してもらいたいところが
プッシャーテーブルの「前後運動にかかる時間」です。
ゲーム機や地域によって前後運動の速さは変わりますが、
目安をいいますと、奥から手前、手前から奥へ移動するのにそれぞれ1秒~2秒かかります。
なので、往復で考えると前後運動1回行うたびに、2秒~4秒かかっていると考察すれば、
実際のゲームに近い本格的な動きを実現させることができます。
理想的な時間は、間をとって1回前後させるのに3秒程度かかるのが最も本格的に見えてきます。
②プッシャーの前後運動を自動化させているのは?
多くの自動で動く機械は「電気」で動いており、
電気を使って運動(動き)に変えているもののほとんどは「モーター」です。
モーター以外に何があるかといえば、電磁石の働きを利用した「ソレノイド」や、気圧や油圧を利用した「シリンダー」と呼ばれるものがあります。
モーターといいましても、もともとは「コイル」とよばれる「電磁石(じしゃく)」と「磁石」をの性質を使った部品です。
モーターは、電気を使って回転運動を行います。
この回転運動を、前後に往復する運動に変えることでプッシャーテーブルが前後するようになっています。
回転運動を前後に往復する運動に変えるには、「動力伝達」の手段を応用することで変換することができます。
一般的に「回転運動」を「前後運動」に変換する方法は大きく3種類あり、これらについては別の記事として投稿を予定しています。
③「rpm」って何?
よく、速さの指標として考える「rpm」ですが、これは「Revolution(Rotation) per minute」の略を
表しており、1分あたりの回転数を表す単位です。
例えば、
1rpmであれば、1分に1回転するという意味になり、
60rpmであれば、1分で60回転・・・すなわち1秒で1回転するという意味になります。
数字が大きければ大きいほど、回転数が多い⇒回転速度が速いということになります。
④モーターの力(トルク・馬力・速さ)の関係
「トルク」は、日本では「gf・cm」や「N・cm」といった単位で表されています。
簡単に言えば"回転させる力"を表しています。
たとえば、マブチモーターの「FA-130」タイプモーターの場合、性能表を見ると「26gf・cm」という仕様になっています。
モーターの中心にある回転軸に棒を取り付け、回転軸からちょうど「1cm」離れた場所に、重さを測る「はかり」を設置します。
モーターを回転させて、棒がはかりに直撃すると回転がストップします。しかし、モーターは回転を続けようと「はかり」に力が加わります。
このとき、モーターの回転ではかりに押し付けている力が、重量で置き換えると大体「26g」くらいの力があるということです。
厳密にいえば、棒の重さや力の加わっている方向によって多少数値が変わります。
タミヤの4速クランクギヤボックスセットなどで使用されているモーターは、モーター単体でいうとこの程度しか力がないということになります。
「馬力」は、先ほどのトルクで記述した回転させる力(トルク)と、回転数を掛け算して、
モーターそのものが役割として果たす回転における仕事の性能です。
モーターは電気を使って回転しますが、言い換えると、電気を使って回転させることが、モーター本来の仕事と言えます。
この仕事の性能こそが、「馬力」になります。
上記の表現では理解に苦しみますので、簡単に説明すると、モーターの回転に関する性能をまとめて数値にしたものです。
「馬」という文字が使われていますが、昔は自動車というものがなく、モノや人を輸送したり運ぶための移動手段がもともと馬であったことが由来です。
プッシャーを自動化させるときに、馬力を考えるというのはオススメできません。
馬力とトルクが同じ意味と認識されている方や、馬力が高いと力が強いと考えていた方は要注意です。
理由は2通りの考え方があるからです。
馬力は回転数と回転させる力の両方を考慮して算出したものであり、馬力が高いといっても、
「回転数が多く、回転する力がない」という場合と、「回転数が少なく、回転する力が強い」という2通りの考え方ができます。
例えば単純な掛け算で置き換えてみましょう。
馬力が10馬力だった場合、回転数が2で、回転させる力が5だったときと、回転数が5で、回転させる力が2だったという2通りがあるという解釈ができるわけです。
つまり、計算式で考えると「2×5」と「5×2」の違いによって、その結果馬力がともに同じ「10」だったということになります。
なので、結局は「トルク」と「回転数」の両方を考えてあげる必要があります。
馬力の単位として「馬力」が使われます。馬力を求める計算式には動力だけでなく、電力や熱量にも対応しており、さらに国によって計算や考え方が違います。ややこしいのでここでは説明は省略したいと思います。
「速さ」は、モーターの回転数「rpm」と、モーターの回転軸に取り付ける円盤(車輪)に影響します。
たとえば、1分に1回転するモーターがあったとします。このとき、回転数は「1rpm」ですね。
このモーターの回転軸に、同じ大きさの車輪をつけて車を作ります。
車輪の直径が「1cm」であれば、円周の長さは「直径×円周率」で求めることができ、約3.14cm(πcm)になります。
円周率=3.1415926535・・・=π「パイ」と学ぶようになります。
モーターが1rpmで回転するとき、1分後にはちょうど車輪が1回転することになるので、円周の長さ分だけ車が移動します。
では、車輪の大きさを変えて、直径が「2cm」のものに変えるとどうなるか・・・答えは約6.28cm(2πcm)になります。
同じ1分で1回転しても、車輪の大きさを変えるだけで車の移動距離が変わります。
距離は速さ×時間で求めることができます。
今回の例で、時間は同じ1分で車輪の大きさだけを変えたので、速さが変わったことになります。
プッシャーゲームの場合、前後運動させる範囲にこの速さが影響します。
この詳しい説明については、別途記事を投稿する予定です。
トルク(Torque)は「Force:フォース」馬力は「Power:パワー」速さは「Speed:スピード」1分間の回転数は「rpm:アールピーエム」で表されます。
⑤たくさんのメダルをモーターで押せるようにするには?
タミヤのギヤボックスセットなどで同梱されているモーターは「FA-130」タイプという形式であり、
主に玩具(おもちゃ)や模型用として使われています。
単体で電気を流し、回転させるとものすごく速く回転をします。
しかし、回転軸を思いっきり手で止めようとすると簡単に止まります。
ここまで速いとプッシャーの動きは速くなるどころか、メダルを押す力はほとんどありません。
そこで、回転の速さと回転の力を変更する仕組みが「ギヤボックス」です。
ギヤボックスの中には、複数のギヤ(歯車)と呼ばれる部品が互いに噛み合っており、そのギアの種類も様々です。
ギヤには、「ギヤ比」という特有の仕様をもっており、歯の数とギヤの直径に応じて決まっています。
この性能のおかげで、回転の性能を変換しています。
具体的に言いますと、ギヤ比が「2:1」という仕様のギヤがあるとして、これを回転数「1rpm」のモーターに取り付けます。
1つのギヤには、大きい直径の歯車と小さい直径の歯車で構成されています。
大きい直径の歯車が「2」に対し、小さい直径の歯車が「1」とすると、速さの関係がちょうど半分(2倍)になります。
これは先ほど④で記述した「速さ」のところを振り返ってもらいますと、直径の大きさで回転の速さが変わると説明しています。
この性質を利用して、ギヤの大小関係を複数かみ合わせることで、モーターの回転軸の回転をより速くしたり、遅くしたりできます。
遅くすれば、回転の力を強めることができますし、逆に回転速度をさらに速めると、回転の力がさらに弱まります。
タミヤのギヤボックスや、ギヤードモーターと呼ばれる製品には、この仕組みによって回転の性能を変換しています。
自転車やマウンテンバイクの変速機能のついたもので考えると分かりやすくなります。
自転車が坂に差し掛かった場合、普段以上にペダルを漕ぐ(こぐ)力が必要になります。
そこで、変速機でギアチェンジを行い、坂を上る速度を落とす代わりに、ペダルを漕ぐ力を軽くしてあげるという手段をとります。
これと同じことをギヤボックスやギヤードモーターのギヤヘッドと呼ばれる部分で行っているわけです。
ギヤには、回転速度と力の関係を変換する効果をもっているわけです。そして、回転速度と回転力は相反の関係にあります。
相反関係(そうはんかんけい)・・・「一方が上がるともう一方は下がる」という意味で使用しています。
厳密に言えば、ギヤボックスで行っている回転の力(トルク)と回転数は、ギヤの破損や摩擦(まさつ)などの影響がない限り反比例の関係です。
プッシャーの速さを決める際には、ギヤボックスセットを購入した場合、回転数に応じて設定するギヤ比やトルクが決まるので、販売されている商品の仕様から検討します。
ギヤードモーターについても、トルクまたは回転数が決まれば、どの仕様のモーターが必要になるのかを決めることができます。
⑥まとめとモーターの選定について
①~⑤の内容より、それぞれ仕組みや原理、ちょっとした雑学などを知ってもらうきっかけになったと思います。
プッシャーを自動化させるときに使用するモーターとして、現在市販されているもので最も都合の良いモーターというのはそう簡単にはありません。
といいましても、ゲームセンターで稼動しているメダルゲームのほとんどは、ゲーム企業が直接モーターの販売を行っている専門業者やモーターのメーカーに問い合わせ、ゲームで使うために最も都合の良い性能を決めて特注を依頼することが多いからです。
自作でゲームを作る側からすれば、大体は市販されているモーターの中から最もプッシャーの動力にふさわしいものを選ぶことになるのですが、本気の熱意があるなら直接モーターの販売を行っている企業に問い合わせをするくらいの根性も必要です。
ちなみに、最適な回転数ですが、プッシャーの前後運動を1回往復するのに2秒~4秒が理想と記述しました。
伝達機構によって1回前後に往復するためにモーターを1回転させると考えると、15rpm~30rpmの設定のモーターをお勧めします。
計算例:1往復が4秒の場合、1分で何回往復するか・・・60÷4=15(回転)
トルクについては本物のメダルや硬貨を使うのであれば、ギヤードモーターなどの高いトルクのものを望みます。フィールドの大きさが大きければ大きいほど、メダルの敷き積もる量も多くなるので、タミヤのギヤボックスセットでは押し出してくれない可能性が高くなります。
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